私は道路や下水道そして住宅を建設している会社の中小企業の経営者です。
今から1年半程前に同業の先輩から「このままの状態では、我々の業界の将来は難しいと思う。まずは地域の様々な業種の方たちが繁盛しないといけない。その為には、この地域が元気になる火種を起こしてくれないか。」と言われました。尊敬する先輩からの言葉と全く同様の危惧を持っていましたので、早速に地域の活性化に向けた研究会の発足を考えることになりました。
そして昨年の11月に、この地域で以前からシンクタンクなどに携わっている友人に主旨を説明したところ、快く研究会の立上げを模索してゆくことに同意していただきました。彼は、今までは自分達の先輩たちが中心となり世話役となってこの地域を築いてきたけれど、今からは自分達がその役割を果たすことが必要ではないかと、私に話してくれました。
ところが、私には研究会の骨子すらサッパリ解らない状況でした。
その様な状況の中で、彼から“スマートシティ 西尾モデル研究会”として立
ち上げることも選択肢の一つではないかと提案されました。
そして今年3月に東京で開催されたシンポジウム「スマートシティ構想の現在と未来」に二人で参加いたしました。それは多数の産学官の有識者による2日間の講演会でした。コンピュター制御で都市を管理して、社会資本の効率化を図ることから、自治体で巨大エネルギーシステムを建設して、競争力のあるビジネスを登場させ雇用も生み出している海外の例も紹介されました。
また、西尾市でも採用されだした公共施設の再配置計画の様なことを話された大学教授も見えました。
いずれの講演もエネルギーの無駄使いをしない、コンパクトシティを目指す近未来都市のことでありました。また日本国内で、そのプログラムをすでに実施していている先進地域もいくつか紹介されました。
今年の5月ぐらいまでは研究会の骨子として、前例があるので具体的行動指針が速やかに提案出来るであろう“西尾市スマートシティ構想”を地元経済界や大手企業そして専門家チームで研究していこうとイメージをしていました。
ところが私には二つの疑問点と不安が同時に浮かんで来ておりました。
一つ目は、この地域ではそのような組織による活動に違和感があるという感覚的なことと、偉大な経済的成功者でないと経済界は集まってくれないという不安もありました。では、そんな求心力のある人はいるのかと。
二つ目は、都市の効率化を求めるテクノロジーとハードの組み合わせのスマートシティー1本だけで地域の活性化は可能かといえば、そうではないとの考えが出てきたわけであります。確かに日本の都市にはそれが素直にコンセプトとして採用できるところも多々ありますが、この地域は多く工場群と商業施設と農水産業、そして多くの自然を有した、まだまだ潜在力が多くあるエリアであることを考えれば、もう少し多面的なコンセプトを掲げた方が良いのではないかと思い始めました。人間としてのナイーブなところに触れていくことがなければ、市民の協力はどんな良い仕組みでも、受け入れてくれないでしょう。
現在では世の中はインターネットの普及で個人の知的資産は膨大なものになり、まさに個の時代に突入していると言われています。
そうであるならば、いっそ市民レベルでの地域活性化の議論は可能ではないかと考えました。トップダウンからボトムアップへの変換、そして対立からサポートへの新しいパラダイム(思考の枠組み)を展開してゆくことが、今からのキーワードとなるのではないでしょうか。
その時に思いついたのが“まちづくり・ひとづくり”というコンセプトでありました。地域を愛するゆえに「まち」のことを考えることが出来る。
立派な「まち」が出来て、そこの住人がそれなりに成長していれば、その先は素晴らしいものに向かっていくばかりです。
ならば研究会メンバーは老若男女あり、また西尾市のことを想っていてくれる人達全員が対象になってきたのであります。そして、南部三河人気質を原点としたアイデンティティーのある地域にしたいと決心しました。
ここまでの大転換を、一緒に相談してきた先の彼に想いを伝えたら、快く受け入れていただけました。
今でも、ただの自分の我儘を聞いていただけただけではと恐縮しています。
そうと決まれば、すぐに周りの人々に声をかけていきました。ただ、西尾市ではこの様なシステムの研究会がないこともあり、私の説明では理解していただける方は少なく、質問をされて明快な応答が出来ることが出来ませんでした。そんな中で、4名の方々が世話役就任を承諾していただけた時は大変嬉しかった訳であります。
世話役会は7月に始まり11月で11回を重ねることになりました。
その期間中に私は、ある他市のワークショップに出席しました。そこは非常にリラックス出来るミーティングの場ありまして、様々の意見を皆さん持って見えることが無理なく伝わってきました。
これは“ワールドカフェ”という全く新しい手法だそうで、これなら市民誰でも気楽に参加してもらえる。そして、想定外のアイデアの出る土壌がここにあると確信したのであります。この会のネーミングのワークショップはここからの由来です。“愛シティにしお”は「愛してください西尾市を!」をショートカットしたものです。ここにワークショップ“愛シティにしお”が第3回の世話役会で可決されたのでありました。
その後の世話役会は規則や会費のことを協議しましたが、一番悩んだのが、ワールドカフェと言われる手法での会話を、テーマを提供された方や出席されなかった会員や協賛会員の企業の方に、どのようにしてお伝えすることが出来るかでありました。
そして世話役会の認識を一つにする為に、9月にはプレワールドカフェを試行して感触を掴むこともいたしました。そこでは年代層や立場も全く違う市民の人達18名に参加していただきました。
街の商業協同組合の理事長さんから「旧市街地の活性化はどうしたら出来るか!」をテーマとして、今までの組合活動の状況を、お話しいただきました。そこからの1時間30分がとても短く感じられるぐらい気楽な会話をしながら、中身は実にシリアスな意見が多くだされました。十代の参加者が「僕の意見も聞いてくれたから、とても嬉しかった。」と感想をもらしていたのが、とても印象的でした。
この手法は意見を最後に集約することではなく様々な多くの意見は、そのままアイデアになるとの定義ですから、会話のやりとりの状況が解らなければ、後で要約された報告書を見ても理解不能となることは予測が出来ました。ワークショップの文献を探っても効果的な伝達方法は現時点では見つけることが出来ませんでした。結局、会話をそのまま録音して再生できる仕組みをホームページに載せることに至りました。また、テーマのガイドや協賛企業さんのホームページとのリンクなどのサービスを考えていますが、なにせ初めて試みなので、実際には出来ないこともあるかも知れませんがお許しいただきたいと思います。その他にも多くの課題がありましたが、世話役会の皆さんの粘り強い意志が反映され今日をむかえることが出来たことを深く感謝いたしております。
そして、いよいよ今月から会員募集の運びとなりました。目標として個人会員は50名以上、協賛会員は30社以上としていますが、たとえ最初は少ないメンバーでも開催をいたします。前述でも申し上げましたが、新しい会議のスタイルで且つ、それが“まちづくり・ひとづくり”と広範囲のテーマなので説明しにくいこともあり、体験参加などを通じてPRしていきます。
会員資格は世話役会の承認を必要としますが、次のルールを守っていただけるだけでOKです。それは「他人の意見を尊重すること」が守れる人です。
会議と言えば、討論したりして意見をある方向に決めなくてはいけないといったイメージですが、このワールドカフェスタイルは全く対局でありまして「決めない会議」とも呼ばれることがあります。多くのアイデアを出すことと参加者同士の信頼関係を生むことを真髄としているからです。お茶やお菓子を食べながら、2時間あまりのひと時を、リラックスした感じで一つのテーマについて話し合っていただくだけで良いのです。
どうしてこんな緩い、そして楽しそうな会議で“まちづくり・ひとづくり”が出来るのか心配の向きがありますが、すでに地域の仕組みの大半は、議会や学校や市長さんをはじめとする職員さんなど執行機関の方々が充分に議論を尽くしての結果でありまして、改めて腰を据えて部外から考えても解決に至るのは稀と思われます。
むしろ、その道の経験の浅いメンバーからの視点での意見と、その意見の掛け合いから生まれる想定外の意見が必要とされる世の中になっていると思うのは、私だけではないはずです。リラックスしている状態でのアイデアと、仲間との会話の中で新たな発見が出来たことを、自分自身の過去にも体験されておられるのではないでしょうか。
さて、私達の西尾市の経済・市政・教育をサポートするワークショップ“愛シティにしお”がカフェスタイルで来春オープンいたします。
「まちづくり・ひとづくりの西尾モデル」として全国に発信出来るようになればと思っています。
そして世話役一同で“私達と楽しい関係のお友達になりませんか”と心よりお待ちしています。
ワークショップ“愛シティにしお”
世話役代表 高原 宏
-
ワークショップ“愛シティにしお”発足の経過平成26年11月10日
-
活動日誌エントリー一覧